子どもの健康度調査 QTA30 

田研出版

特徴
  • 近年の学校現場において、体調不良を訴える、あるいは、心の問題を疑われる児童・生徒が少なくありません。しかし、どの子どもにどのような支援を行ったらよいのか、悩ましい問題です。支援を必要とする子どもを早期に発見し、適切な対応を行うことができれば、子どもは心身の健康を速やかに取り戻すことができると考えられます。
    QTA30 は、学校現場において心身の問題を持つ子どもを早期に発見し、早期に必要な支援を行うことを目的に、心身のトリアージツールとして開発されました。また、医療機関においては心身の健康度を診断するアセスメントツールとして利用できます。
    QTA30 は、子どもの心身の健康度を評価する質問票として大規模調査の科学的分析に基づき作成され、信頼性、精度とも高く、明確なカットオフ値が設定され、しかも子どもが約3分で回答できる平易な評価方法であり、スクリーニングテストとして、また経時的な評価法として極めて有用です。
  • 1.「身体症状」の質問に重点を置き、日本の子どもの評価法として適切 子どもの心身の状態を包括的に評価する既存の日本語版質問票と比べて、QTA30 では、身体症状に関する質問の割合を多くしました(9問で全体の1/3)。その理由は、子どもでは心理社会的ストレスが生ずると精神症状よりも身体症状(頭痛、腹痛、食欲不振、嘔吐、立ちくらみ、不眠など)が現れやすいことを考慮したからです。子どもは自分の気持ちを言語化する能力が未発達であり、ストレスを身体化しやすく、また、子どものうつ病においても、無力感や悲壮感より腹痛や頭痛などの身体症状が初発症状となることが多いと報告されています。また、日本の子どもでは欧米と比較し、身体愁訴が著しく多く、また、ストレスによる身体症状を表しやすい特徴があるからです。
  • 2. 既存質問票による評価との高い相関性 新しい質問票でありながらも既存質問票による評価との相関性が高く、信頼性が高く、且つまたこれらの目的とする領域のターゲットをも網羅しています。
  • 3.質問数が少なく、子どもが容易に回答 質問数が30 問(別に採点除外の質問が11 問)なので、子どもが容易に回答できます。
  • 4.心身に影響を与える心理社会的因子を多角的に評価 身体状態、精神状態だけでなく、心身に影響を与える心理社会的因子を多角的に評価できます。因子分析で明らかにしたように、「身体症状」(9問)、「抑うつ症状」(5問)、「自己効力感」(8問)、「不安症状」(6問)、「家族機能」(2問)について評価できます。
  • 5.子どものうつ病をスクリーニングし、自殺の予防対策に 「抑うつ症状」の5問は、子どものうつ病をスクリーニングする際に有用です。日本では11 歳から19 歳の思春期の自殺が増えており、うつ病などの精神疾患の早期発見が重要です。特に中高生の自殺ではいじめが重要な原因のひとつですが、「抑うつ症状」の相対的得点は中学2年生から上昇していることから、QTA30 が自殺の予防対策にも役立つことを願っています。
  • 6.効果的な指導方法がわかる 自己効力感とは、自分が素晴らしいと思える自己肯定感や、困難を乗り越えて目標に向かうポジティブな心理状態です。自己効力感が高い子どもほど、学校への適応が良好で、慢性疾患の子どもにおいては、成人期での健康状態が良くなると報告されており、既存の質問票でも自己効力感を重視しています。QTA30 では、「自己効力感」の得点が高いほど、自己効力感が低いことを示しています。学年が上がるごとに「自己効力感」の相対的得点は上昇しているが、とりわけ高得点の子ども(=とりわけ自己効力感が低下している子ども)には、批判的に励ますような指導(このままではダメだ)よりも、肯定的な心理的支援(よく頑張っているので、もっと良くなるようにこうしてみよう)が効果的です。
  • 7.心理的ストレスに気づくきっかけに 「不安症状」は「抑うつ症状」と同様に精神状態を反映しています。学校生活(学業、友人関係など)や家庭生活において何らかの心理的ストレスがあると考えられます。大きな心理的ダメージを生ずるような重大なライフイベント(生活上のできごと)でも不安症状は生じるものですが、むしろ小さな人間関係の摩擦など、日常生活における取るに足りないようなできごと(chronic daily hassles)による慢性的な心理的ストレスによって不安が形成されます。chronic daily hassles は自身も周囲も気づきにくく対処が遅れます。したがって、「不安症状」の得点が高い場合は、学校生活や家庭生活におけるchronic daily hassles がないのか、注意する必要があります。
  • 8.子どもの「受容」ができているか 「家族機能」は、おもに家族による子どもへの心理的サポートを表しています。サポートをする保護者の心構えとして、子どもの「受容」は非常に重要です。これには具体的に、子どもの話に耳を傾ける、子どもの努力を認める、という行動が含まれます。これらの「受容」は、子どもの心が安定するために重要であり、特に小児心身症の発症、症状遷延に大きく影響することが報告されています。
  • 9.子どもの心身の健康状態を平易に評価 学校現場や医療機関において子どもの心身の健康状態を平易に評価できることから、支援を必要とする心身症や精神的問題をもつ子どもを早期に発見できるスクリーニングテストとして有用です。
  • 10.中学以降の学年による心理的変化の特徴をとらえる 「抑うつ症状」「自己効力感」「家族機能」が、中学1年生から中学2年生にかけて急激に悪化し、中学2年生以降では、「総得点」「身体症状」「抑うつ症状」「自己効力感」は横ばいとなり、「不安症状」「家族機能」は改善が認められています。このような思春期の心理変遷の特徴は Jozefiak らの報告とも一致するものです。子どもを支援する場合には、このような思春期心性に配慮した関わりが求められます。
著者 田中 英高
永光 信一郎
適用年齢 小学4年生から高校1年生
検査用紙(20人分) 6,600円(6,000円+税10%)
7,040円(6,400円+税10%)※2023年4月より新価格
手引  660円(600円+税10%)

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Category -個別検査, うつ・ストレス・不安, 小学校用, 中学校用, 児童指導・支援, 生徒指導, 健康度調査